- Title:牡丹・百合図 (Peonies and Lilies)
- Dimensions:121.4×70.3cm
- Medium:絹本着色
- Collection:慈照寺
作品解説
もちろん、若冲の代表作といえばその質および量ともに≪動植綵絵≫であるに決っている。≪動植綵絵≫に到るまでのあいだ、若冲があらゆる意味での試行錯誤を繰り返していたわけで、その道程を辿ることは若冲の表現意識の根源を探ることと同義であるとともに、マスターピースを支える骨格の実相を明らかにもする。
≪動植綵絵≫を少しばかり小ぶりにしたこの二幅対の絹本著色画も、その意味でははなはだ興味をそそられる作品といえるだろう。「平安若冲居士藤汝鈞製」という署名の書きぶりのたどたどしさは、現存する若冲画のなかでも初期(40歳での隠居以前)に位置していることを物語る。ちなみにこれと同文の署名は、和歌山・草堂寺の≪鸚鵡図≫と、中国明時代の画家・文正筆の≪鳴鶴図≫双幅(相国寺蔵)を模写した≪白鶴図≫とに見ることができる。つまり、これらはほぼ同時期に描かれたものと推定してよいわけだ。
そのこともあって、この双幅には≪動植綵絵≫と比較して、ややもすれば硬直した画面づくりが感じられる。
それはある画家の画風を若冲が学ぼうとするところから生じているのだ。つまり鶴亭である。鶴亭は長崎・聖福寺の黄檗僧で、唐通事であり中国人画家・沈南蘋に師事した熊斐に絵を学んだ。南蘋風の花鳥写生画を上方に広めたのはまさにこの鶴亭そのひとであり、鶴亭が還俗して売画稼業をしたのは延享4年(1747)頃大坂に移ってからのことであり、その年の夏には京都へ居を変えた。ちなみにこの年、若冲は32歳である。若冲における鶴亭の強い影響の痕跡は、本図のみならず、墨画≪風竹図≫(細見美術館蔵)などにも明らかに遺されている。
もっといえば、この双幅においても示されているが、若冲画に特有の署名や印章の無造作な位置取りも。鶴亭画と通有するのだ。
『若冲ワンダフルワールド』
≪動植綵絵≫を少しばかり小ぶりにしたこの二幅対の絹本著色画も、その意味でははなはだ興味をそそられる作品といえるだろう。「平安若冲居士藤汝鈞製」という署名の書きぶりのたどたどしさは、現存する若冲画のなかでも初期(40歳での隠居以前)に位置していることを物語る。ちなみにこれと同文の署名は、和歌山・草堂寺の≪鸚鵡図≫と、中国明時代の画家・文正筆の≪鳴鶴図≫双幅(相国寺蔵)を模写した≪白鶴図≫とに見ることができる。つまり、これらはほぼ同時期に描かれたものと推定してよいわけだ。
そのこともあって、この双幅には≪動植綵絵≫と比較して、ややもすれば硬直した画面づくりが感じられる。
それはある画家の画風を若冲が学ぼうとするところから生じているのだ。つまり鶴亭である。鶴亭は長崎・聖福寺の黄檗僧で、唐通事であり中国人画家・沈南蘋に師事した熊斐に絵を学んだ。南蘋風の花鳥写生画を上方に広めたのはまさにこの鶴亭そのひとであり、鶴亭が還俗して売画稼業をしたのは延享4年(1747)頃大坂に移ってからのことであり、その年の夏には京都へ居を変えた。ちなみにこの年、若冲は32歳である。若冲における鶴亭の強い影響の痕跡は、本図のみならず、墨画≪風竹図≫(細見美術館蔵)などにも明らかに遺されている。
もっといえば、この双幅においても示されているが、若冲画に特有の署名や印章の無造作な位置取りも。鶴亭画と通有するのだ。
『若冲ワンダフルワールド』