作品詳細
- Title:雪梅雄鶏図 Setsubai Yukei-zu(Plum tree and Rooster in the Snow)
- Dimensions:113.5×56.4cm
- Medium:絹本着色 一幅
- Collection:両足院
作品解説
前出の≪雪中雄鶏図≫は紙、本図は絹と、描かれている材質はそれぞれ相違するけれども、その制作意図は一致する。すなわち雪に閉じ込められた冬の日に頭を下げて餌をついばむ雄鶏が主役である。ただし、われわれが受ける印象ははなはだ異なる。それはどこから生れるのだろうか。
ほとんど同じ形姿を示す雄鶏ではあるが、細見美術館本の方がこの両足院本に先行する作品であることは、前者がどことなく雄鶏が取ってつけたような(換言すれば初期的なウブさといえようか)硬さを見せるのに対して、両足院本においては雄鶏の頸とその下の羽との関係がいとも自然に描かれているところからも知られるだろう。
細見本の署名は「景和」という字のみを記すだけだが、本図では「平安城若冲居士藤女鈞画於錦街陋室」とあって、若冲の自信のほどがうかがえる署名の仕方である。これとまったく同じ署名を施した作品としては、≪雪芦鴛鴦図≫≪紫陽花双鶏図≫(いずれもエツコ&ジョー・プライスコレクション)≪雪中遊禽図≫≪枯木鷲猿図≫(それぞれ個人蔵)など、すべて絹本著色画の傑作選が挙げられる。ちなみに、署名の意味は、平安城に住む若冲居士・藤女鈞が錦街の陋室において描いた、ということだ。「平安城」は京都を、「錦街」は錦小路を中国風に呼んでみたわけで、そもそも「藤女鈞」自体が伊藤を「藤」と修して中国的に三文字の姓名と称したものである。「陋室」とはせまくてむさ苦しい部屋の意味で、京都錦小路にある自分のアトリエを謙虚してかく記した。
雄鶏のとさかの真紅の色彩は山茶花の花弁のそれと呼応して、どこか画面に艶冶な雰囲気を醸し出している。かてて加えて、背景に刷かれた墨が京都の冬のどんよりと重たい空気をいとも見事に表現していることに気づきたい。
ほとんど同じ形姿を示す雄鶏ではあるが、細見美術館本の方がこの両足院本に先行する作品であることは、前者がどことなく雄鶏が取ってつけたような(換言すれば初期的なウブさといえようか)硬さを見せるのに対して、両足院本においては雄鶏の頸とその下の羽との関係がいとも自然に描かれているところからも知られるだろう。
細見本の署名は「景和」という字のみを記すだけだが、本図では「平安城若冲居士藤女鈞画於錦街陋室」とあって、若冲の自信のほどがうかがえる署名の仕方である。これとまったく同じ署名を施した作品としては、≪雪芦鴛鴦図≫≪紫陽花双鶏図≫(いずれもエツコ&ジョー・プライスコレクション)≪雪中遊禽図≫≪枯木鷲猿図≫(それぞれ個人蔵)など、すべて絹本著色画の傑作選が挙げられる。ちなみに、署名の意味は、平安城に住む若冲居士・藤女鈞が錦街の陋室において描いた、ということだ。「平安城」は京都を、「錦街」は錦小路を中国風に呼んでみたわけで、そもそも「藤女鈞」自体が伊藤を「藤」と修して中国的に三文字の姓名と称したものである。「陋室」とはせまくてむさ苦しい部屋の意味で、京都錦小路にある自分のアトリエを謙虚してかく記した。
雄鶏のとさかの真紅の色彩は山茶花の花弁のそれと呼応して、どこか画面に艶冶な雰囲気を醸し出している。かてて加えて、背景に刷かれた墨が京都の冬のどんよりと重たい空気をいとも見事に表現していることに気づきたい。
『若冲ワンダフルワールド』