作品詳細
- Title:風流四季哥仙 二月 水辺梅 Elegant Poems for the Four Seasons (Furyu Shiki Kasen ) : Plum Blossoms by a Streem ( February )
- Artist:鈴木春信 Suzuki Harunobu
- Medium: 錦絵
「風流(あるいは風俗)四季歌仙」のシリーズは、古典和歌の詩情に発想の契機を得ながら描かれた、季感に富む美人風俗画の傑作として名高い。本図「二月 水辺梅」は、平経章の古歌「末むすぶ人の手さへや匂ふらん 梅の下行水のなかれハ」にうたわれた恋の情緒を見立てたものであり、夜闇のなかに芳香を放つ白梅の花は、少年と少女のけがれない愛をたたえるにふさわしいモチーフとして選ばれたものであろう。梅の枝を手折る図は、春信が好んで描いた主題の一つである。
黒の背地に漆黒の夜闇を暗示させる象徴的な背景処理は、多色摺技法を完成させた春信の独創にかかるものであった。「水売り」(はじめ明和2年の絵暦として作り、のちに改版して錦絵とする)に見る紅一色の背景は、色彩固有の表現感情で明々とした夏の日盛りを象徴したものであり、こうした手法の先駆的なものと考えられることができる。多色摺の可能が、素地のままに残してかえりみなかった従来の美人画の背景に、注意深い配慮を要求することとなった結果の所産ではあった。(小林)
『原色日本の美術17 風俗画と浮世絵師』
黒の背地に漆黒の夜闇を暗示させる象徴的な背景処理は、多色摺技法を完成させた春信の独創にかかるものであった。「水売り」(はじめ明和2年の絵暦として作り、のちに改版して錦絵とする)に見る紅一色の背景は、色彩固有の表現感情で明々とした夏の日盛りを象徴したものであり、こうした手法の先駆的なものと考えられることができる。多色摺の可能が、素地のままに残してかえりみなかった従来の美人画の背景に、注意深い配慮を要求することとなった結果の所産ではあった。(小林)
『原色日本の美術17 風俗画と浮世絵師』