名所江戸百景 王子装束えの木大晦日の狐火

名所江戸百景 王子装束えの木大晦日の狐火

  • Title:名所江戸百景 王子装束えの木大晦日の狐火 New Year’s Eve Foxfires at the Changing Tree, Ôji (Ôji Shôzoku enoki Ômisoka no kitsunebi), from the series One Hundred Famous Views of Edo (Meisho Edo hyakkei)
  • Artist:歌川広重 Utagawa Hiroshige
還暦の広重が、濫作によるマンネリズムから抜け出す意図を秘めて、世に送った竪版シリーズ「名所江戸百景」は、好評を得て予定の百枚を越したが、さすがにそのなかには傑作が多い。「王子装束ゑの木大晦日の狐火」は毎年大晦日の夜、王子稲荷の榎のもとに、諸方の狐が燈火をともしておびただしく集まるという言い伝えを、「江戸名所図会」にもとづいて描いたもの。“其ともせる火の連りつづける事、そくばくの松明を並ぶるが如く、数斛の蛍を放飛しむるに似たり”という名所図会の記事から、広重の詩心と想像力が、このようにすばらしい冬の夜の夢幻劇をひきだした。遠くに点滅する狐火が星のまたたきへと移ってゆくあたりの微妙な韻律が、画面に神秘的な魅力すら与えている。星空の詩的表現としても、絵画史に残る傑作であろう。
『原色日本の美術17 風俗画と浮世絵師』