『ホモ・サピエンスの宗教史 宗教は人類になにをもたらしたのか』を読む ③ 

宗教の原初形態

  • 共同性を産出し、共同であることの喜びを表出するもの
  • 儀礼を通じて身体的能力と精神的能力を開発するもの
  • 自然環境や地域性、宇宙全体のリズムに深く結びつき、地域の中に根付かせるもの

世界宗教の登場

  • 身体性と欲望は悪の第一原因とされる
  • 地域性、生業との関係性の否定
  • 共同性がおなじ信仰の者たちの共同性まで切り詰められた

ポスト宗教の時代

  • 共同性、地域性、身体性、全人性、享受性、生業との関係、宇宙のリズムといった宗教が過去に持っていた包括的で丸ごと人間を動かす力は断片化されている
  • 死は剝き出しのまま放置され、子孫のもとに再生することも天国や浄土で永遠の生を与えられることもない
  • 宗教の根幹…共同性の経験=私たちが生まれる前から存在し、死後も存在し続けるものへの畏怖と愛着
  • 祭りやそれに類する行為は残された可能性の一つ

地域に根ざし、身体的な技法を尽くし、即座の享受と共同性を可能にし、生業や宇宙のリズムとも関係する祭は、さいわい今なお私たちの社会で生きられている。いくつかの都市の祭が多くの参加者によってにぎやかに祝われる一方、人口流出のつづく農村部で祭が失われつつあるのは残念である。身体の動きを同調させることで共同性を現出させ、功利性とも利害とも無縁な祭は宗教の華であり、地域の華である。

まさに昨日、1000年以上続いた祭りが終わりを迎えた。

そして同時並行で読んでいた『谷川健一著作集7 女の風土記 無告の民』と『春駒日記』に出てくる、農村と吉原の悲惨な生活をみると、地域性や共同性がなくても今の生活の方が何倍もマシだと思ってしまう。