歌舞伎・花鳥図屏風(出光美術館)

歌舞伎・花鳥図屏風(出光美術館)
右隻第3扇

歌舞伎・花鳥図屏風(出光美術館)
右隻第4扇

歌舞伎・花鳥図屏風(出光美術館)
若衆歌舞伎

歌舞伎・花鳥図屏風(出光美術館)
左隻第3扇

歌舞伎・花鳥図屏風(出光美術館)
左隻第4扇

作品詳細

  • Title:歌舞伎・花鳥図屏風 部分 Kabuki Performance by Courtesans Young Men
  • Date:江戸時代 寛永期
  • Medium:六曲一双 紙本金地着色
  • Collection:出光美術館
非常に小型の六曲一双の屏風で、表裏に金地極彩色の絵が描かれている。形態からみて、香屏風として用いられたと考えられる。
右隻は、小屋前と鼠木戸付近、常設の小屋内の桟敷・舞台・橋掛りという、歌舞伎図としては基本的なパターンで成る「若衆歌舞伎」である。舞台上では若衆髷に派手な衣装の役者が扇を手に連舞いを踊り、橋掛りには能のかまえの若衆が登場したところである。方三間の舞台・囃子座の毛氈・木戸・竹矢来の線・欄干・床板・屋根には反復する右上がり、右下がりの斜線、さらに赤い幕の水平線や舞台柱に垂直線を用いるなど、画面にリズムと奥行を与えており、計算された明確な構図に特色がある。ほかの『歌舞伎図屏風』にみかける熱狂、猥雑で騒がしい雰囲気は感じられないが、各人物は簡略かつ的確な筆致で上品に描かれ、視線も活き活きとしており、特に凛とした眼は印象に残る。
左隻の芝居小屋の造りも右隻とほぼ同様で、方三間ほどの舞台を中心に、毛槍を横たえ、刺股や突棒を立てた櫓と二層の桟敷、橋掛りを描くが、右隻とくらべ構図・構成意識に平面志向が強い。舞台では“茶屋遊び”が演じられており、一座のスター扮する大尽客、茶屋のかか、猿若の姿が見える「遊女歌舞伎図」である。見物席では“纏頭”をささげる男や舞台に見入る者、飲食に忙しい者、桟敷下の幕をめくり食物を運び入れる男など老若男女が集まる活気に満ちた様子を描こうとした意図が窺えるが、右隻とくらべて各人物は関連性に欠け表情も堅い。
構図の面でも、斜線を用いつつも方向がかなりずれるなど、画面構成が一貫せず、不安定で煩瑣な印象を受ける。
左右隻ともに人物表現・衣文線などの特徴から狩野派画家の作と考えられるが、画面構成・人物描写いずれの点でも右隻の「若衆歌舞伎」の方がすぐれていることから、左右で作者が異なることが推測される。
『出光美術館蔵品図録 風俗画』