「大津絵と江戸の出版」(国立歴史民俗博物館)

瓢箪鯰

大津絵 瓢箪鯰

もとは禅の公案に由来する画題。口の小さい瓢箪で大きくてぬらぬらする鯰を捕らえようとするのは要領を得ないことで、思慮の足りない行動を風刺するものとされている。この画題は、安政の大地震の後に流行した鯰絵にもとり入れられた。「大津絵十種」のひとつ。
『大津絵と江戸の出版』展示解説

座頭

座頭

目の不自由な座頭が犬に褌を咥えられている様子を描いており、意外なものに足をすくわれることを意味している。倒れない護符としても使われるとされる。「大津絵十種」のひとつ。
『大津絵と江戸の出版』展示解説

鬼の寒念仏

鬼の寒念仏
Title:鬼の寒念仏
Artist:歌川国貞 Utagawa Kunisada
Date:天保(1830~44)頃
Collection:国立歴史民俗博物館

大津絵の人気画題である鬼の寒念仏を、浮世絵師の五渡亭(歌川)国貞が錦絵に描いたもの。詞書きには、これを家に貼っておくと、子供の夜泣きを止め、泥棒避けにもなるとある。
「大津絵の筆の祖めや何仏とは故人の名吟にして大津又平の妙手を賞たり。この画を家に貼置ときは小児の夜啼きをよく止め、且盗人の入る事なし。畢竟魔除となるゆへなり。されば此たび五渡亭ぬしに乞て是を摸さし世に公に鬻ぐのみ」
『大津絵と江戸の出版』展示解説

鷹匠

大津絵 鷹匠

鷹匠は公家や武士に仕えて、鷹狩り用の鷹の世話や訓練をする役目を果たす。作物を荒らす小鳥を鷹が追い払うことから、五穀豊穣の護符ともされた。大津絵では羽織・袴姿の若衆として描かれるが、その姿は江戸末期の浮世絵版画にもとり入れられている。
「大津絵十種」のひとつ。
『大津絵と江戸の出版』展示解説

馬乗り若衆

大津絵 馬乗り若衆

大津絵によく描かれる若衆には裃姿で凛々しく馬に乗るこの図のような図柄と、「鷹匠」とがあるが、江戸末期の「大津絵十種」ではもっぱら「鷹匠」となる。
『大津絵と江戸の出版』展示解説

釣鐘弁慶

大津絵 釣鐘弁慶

園城寺(三井寺)と比叡山延暦寺が宗門争いをしていた時代、延暦寺の弁慶が園城寺の釣鐘を奪って比叡山の山上まで引きずり上げ、そののち谷底に投げ落としたという、弁慶伝説のひとつを絵画化したもの。大津の地元にもゆかりのあるエピソードなので、人気のあった画題。
『大津絵と江戸の出版』展示解説

弁慶の七つ道具

大津絵 弁慶の七つ道具

長刀や太刀、槌、刺股など七つの武器や道具を持った弁慶の絵姿で、「弁慶の立ち往生」とも呼ばれる。大津絵では比較的古い画題で、「大津絵十種」ではもっぱら「釣鐘弁慶」が描かれるようになる。
『大津絵と江戸の出版』展示解説

釣鐘提灯

大津絵 釣鐘提灯

大津絵の古い画題のひとつで、猿が天秤棒を担いでいるが、軽い提灯の方が下がり、重い釣鐘が上がっている。道理が転倒した世の中を風刺したものとされている。賛は「身をおもふ思いはおもく主親はかろくなりぬる人の姿よ」と、親よりも自分の身を大事に思う親不孝を諭している。
『大津絵と江戸の出版』展示解説

立華

大津絵 立華

立華とは、真(心)を中心に花をまとめる生け花の一様式。もとは芸道上達を願う主題だったが、本図に添えられた道歌「いろいろの道具をならべたつるとも しんがすはらにや花にならぬぞ」(上下逆さまに書かれている)が示すように、「しん」をしっかり持てという教訓を示すものでもある。
『大津絵と江戸の出版』展示解説

鎮西八郎

大津絵 鎮西八郎

平安末期の武将、源為朝の姿を描く。為朝は強弓の武将として知られたが、保元の乱(1156年)では破れた崇徳上皇方につき、伊豆大島に流罪となる。大津絵では弓を立てた甲冑姿で描かれることが多く、武芸上達の護符とされたともいわれ、また疱瘡除けとしても用いられた。
『大津絵と江戸の出版』展示解説