縫箔
刺繍と摺箔の技法を用いたもの。
桃山時代の縫箔は、刺繍が主体で、箔は刺繍の隙間を埋めるものとして用いられました。
刺繍
初期の小袖の刺繍は、裂地の裏側をまわっていない渡し繍いであるため、表の糸はふわりと浮き、やわらかな縫い上りとなります。
モチーフには春の海、桜、土筆、タンポポ、菫、カキツバタ、菊、楓、萩、ススキ、雪持ち笹、芦、柳などの植物や身近な自然が好まれました。
桃山時代の刺繍は、紅や萌黄など明るい色が多く、金銀の箔とともに華やかな印象を与えます。
季節を超えて咲き乱れる草花など、写実にとらわれない自由な文様は、中国の明時代の影響を受けたものと考えられています。
高台院(おね)着用の打掛は、唐織で表されたかのように刺繍で模様を表現しており、刺繍が織物の代替品として始まったことを示唆しています。
摺箔
型紙で糊を置いた上に金・銀の箔を置いて、模様を金箔、銀箔で表現する技術です。
染分綸子地松皮菱取模様小袖(そめわけりんずじまつかわびしどりもようこそで)
黒地には金の摺箔で枝垂れ桜と霞、紅地には刺繍と摺箔で雲を表し、白地には葵文の刺繍に紗綾(さや)形の摺箔の組み合わせ。
慶長末期から元和・寛永期にかけて制作された「慶長小袖」は、摺箔と刺繍で地の部分が見えないほどに模様が施されていることから、当時「縫箔小袖」「地無(じなし)小袖」と呼ばれていました。
紗綾形は、卍の形を崩して連ねた模様。