『完本 仏像のひみつ』山本勉
この本は子ども向けに仏像について解説した本ですが、仏教について学ぶのにもとてもわかりやすい本になっています。
今まで、仏像を見るときに、顔がどうとか美的な面ばかり見て、どういう役割を持つ仏なのかとかあまり気にしてなかったのですが、最近仏教に興味があるので、その延長線上で仏像についても理解を深めたいと思っています。
仏像のランク
仏像は「如来-菩薩-明王-天」の順にエライ。
如来
さとりをひらいた者。
からだには32の大きな特徴がある(細かい特徴は80)。
「釈迦如来」とは釈迦族出身の如来の意。
仏教の教えが広まるにつれて阿弥陀如来、薬師如来などが考え出された。
密教には大日如来という特別な如来がいる。もとは古代イランの太陽神で、密教では宇宙の真理そのもので最高の存在。釈迦のように人が修行して如来になったわけではないので、ほかの如来のようなからだの特徴はない。
菩薩
如来になるために修行中の者。
もともとは釈迦だけだったが、如来の種類が増えたことでいろいろな菩薩が考え出された。
菩薩はまださとりを開く目前の釈迦がモデルなので、古代インドの貴族のかっこうをしている。
地獄のような罪を犯した人が苦しんでいる世界をめぐって、人びとの代わりに苦しみを受ける地蔵菩薩だけは、ほかの菩薩と違って頭を丸めたお坊さんのかっこうをしている。
とくに人気のある観音菩薩は、たくさんの人を救うためにいろいろな姿をとる(十一面観音菩薩、千手観音菩薩など)。千手観音の手はたいてい42本で一つひとつの手のひらに眼がついている。
明王
密教の中で考え出された大日如来の子分。如来や菩薩のようなやさしい顔をしていてはいうことをきかない人びとを救うために作られたため、怒った顔をしている。
天
インドで信仰されていた神が仏教に取り入れられたもの。
男女の区別がはっきりしているものもある。男の天の多くはガードマンの役割をもっている(四隅を守る四天王、薬師如来を守る十二神将、金剛力士など)。吉祥天はもとはインド神話の美と繁栄の女神で、中国の宮廷女性の服装をしている。弁財天はインド神話の川の神で、頭の上には白蛇がとぐろを巻き、蛇の顔は宇賀神という日本古来の水の神の顔になっている。
仏像の材料
金銅仏
金色にするために表面に金メッキをした銅の仏像のこと。
小さければ重たくないし、丈夫で持ち運びしやすい。
古い時代の銅像はロウ型鋳造なので、銅像にロウのやわらかな感じが残っている。
塑像
粘土(塑土)でつくった像。
古い時代の塑像は、心にする木に縄を巻き、粗い土から細かい土へと盛り上げていった。
自由に造形できる点はいいが、壊れやすく、重いので持ち運びが難しい。
漆の仏像
乾漆像…木屎漆(こくそうるし 漆に麦の粉を入れて粘り気をだしたものに木の粉や繊維を混ぜ合わしたもの)を盛り上げてつくる仏像
柔らかいうちは粘土と同じように自由に形をつくれ、乾燥すると粘土より固い。
脱活乾漆造りと木心乾漆造りの2通りの方法がある。
木の仏像
平安時代以降の仏像はほとんど木製。
- 一木造り…頭を含んだ像の中心部分を1本の材木から彫り出す作り方。足りない部分には別の木を継ぎ足す。背中や底に穴をあけて中をくりぬくこともある。
- 寄木造…頭を含んだ像の中心部を、同じ大きさの2本以上の材木を組み合わせたものから彫り出す作り方。材木を合わせる面から内部をくりぬく。
- 割矧ぎ(わりはぎ)造り…頭を含んだ像の中心部を1本の材木から彫り出した後、縦に割って中をくりぬき、元通りに合わせる作り方。
仏像の形と大きさ
仏像の体形
飛鳥時代(7世紀)…胸を引いておなかが出ている
奈良時代(8世紀)…胸とおなかがちょっと前に出る
平安前期(9世紀)…それをさらに強調
平安後期(11世紀)…また胸を引いておなかだけ少し前に出る
仏像の大きさ
釈迦の身長は一丈六尺(丈六)。
座ると高さは半分ということで、八尺。
しかしそんなに大きな仏像ばかり作れないので、その半分の「半丈六」、十分の一の一尺六寸などで作られた。
本当の人間と同じという基準もあった(五~六尺)。
そのほかの像
人
羅漢…ふつうの人間としては最高の修行をしている人。十大弟子など。
太子…王の跡継ぎに決まっている王子。聖徳太子など。
大師…偉大な先生の意。弘法大師、慈恵大師など。
神
日本の神には姿はない。神像は神が何かほかのものに姿を借りてあらわれた、その姿を写したもの。
七福神…「天」がつくのは仏像の天の仲間。福禄寿と寿老人は道教の神。布袋は中国の僧。もともと日本の神様なのは恵比寿だけ。
こんな感じで、もとは仏像なのに、いつのまにか日本の神と思われているものもたくさんある。
動物
台座…普賢菩薩はゾウ、文殊菩薩はライオン、大威徳明王は水牛、孔雀明王はクジャク
十二神将は平安後期に十二支と結びついて、頭の上に十二支の動物をのせている。
文殊菩薩騎獅像および侍者立像
康円(1207-?)作 鎌倉時代 東京国立博物館
仏像の色
金色
金メッキ…水銀に粉々にした金を混ぜて仏像の表面に塗り、熱して水銀だけ蒸発させる方法
漆箔…金箔を漆を塗った表面に貼る方法
金泥塗り…金粉を膠で練ってどろどろにしたもの(金泥)を塗る方法。漆箔よりもざらっとした感じになる。
鎌倉時代から普通の塗り方になり、体は金泥塗り、着物は漆箔という組み合わせが一番多くなった。
金色以外
如来像や菩薩像の髪の毛…青
如来像や菩薩像の肌…金色でない場合は赤とか橙に白を混ぜた色
明王や天の肌…赤、青、緑、黒、白なんでもあり。
色の塗り方
繧繝(うんげん)…あるところを一つの色で塗るとき、同じ濃さではなく、濃さを何段階かに分けて塗分ける方法
紺・丹・緑・紫…紺は青、丹は赤。青の隣に赤、緑の隣に紫とする組み合わせの決まり
壇像…色をぬらない仏像。もとはセンダン、ビャクダンなど名前に「壇」のつく木でつくられた。