長崎祭図 1

長崎祭図 Dragon Dance : a Scene of the Festival in Nagasaki

作品詳細

  • Title:長崎祭図 Dragon Dance : a Scene of the Festival in Nagasaki
  • Date:江戸時代 17世紀中頃 Edo period
  • Medium:一面 紙本著色 Six panel screen Color on paper
  • Collection:出光美術館 Idemitsu Museum
長崎諏訪神社の祭礼のうち、行列の様子を描いたものであろう。
諏訪神社は寛永2年(1625)草創。寛永11年(1634)には新たな社殿の造営・神輿の新調等、祭事興隆の機運が生まれ、その例祭は現在も10月7・8・9日にかけて行なわれる“おくんち”の名で親しまれている。町ごとに工夫をこらした奉納踊りの行列を出し、なかでも丸山・寄合両町の遊女の奉納踊りは人気を博したという。
本図はその奉納踊りのひとつ、薩摩踊りを一踊りした後の休息のひとときの様子と思われる。薩摩踊りとは花卉・鳥獣・玩具などの指物を持ち、太鼓を抱え、母衣を背負い、まわりではやす鉦の音に合わせて手にした長い棒を打合せ拍子をとって踊るものである。本図に見える母衣は龍の飾りのついた豪華なもので、長崎の異国情緒趣味をものがたっている。また指物も羽根でできた一風変わったものである。母衣のそばに座る二人の武者姿の男は、母衣を背負う交替の二人であろう。上方の若い男たちは、すでに祭に疲れた様子をみせている。祭に参加する男たちの心理まで表現していてなかなかおもしろい。
町家の中では島田髷に小袖姿の女たちが見物している。部屋の奥には秋草が描かれた屏風があり季節感を加えている。見物する人は誰もが楽しそうな表情をしており、祭の楽しさが伝わってくる。
ここに描かれた人々と同じように祭を存分に楽しんだ町絵師が、祭の楽しさに共感を寄せ得て描いたものであろう。
『出光美術館蔵品図録 風俗画』