右隻第一扇中部
囲みの中に「とよくにじゃうふたい」と書かれています。
桟敷席は二階建て、屏風が置かれています。
『洛中洛外図大観 舟木家旧蔵本』(1987年)は、能舞台にかかっている演目は「松風」と推測していますが、判明している豊国定舞台の演能記録に「松風」はありません。
『洛中洛外図・舟木本を読む』(黒田日出男、2015年)では、演者を面をつけない「直面(ひためん)」の少年(=牛若)であるとし、演目は「烏帽子折」と推測しています。
『舜旧記』(『梵舜日記』、豊国社の神宮寺別当だった神龍院梵舜の日記)には、慶長19年8月19日に「烏帽子折」の別名とみられる「長ハン」の記録があります。
豊国定舞台では慶長19年まで、4月と8月19日の年2回、能が演じられました。「烏帽子折」はこの日演じられた最後の演目で、豊国定舞台で演じられた最後の能となりました。
左端の僧が神龍院梵舜、冠直衣姿の二人のうち、左が豊国社の社務・萩原兼従、右が吉田社祠官・吉田兼治(兼従の実父)、兼従の前に胡坐をかいて座っているのが兼治の子・幸鶴丸(のちの吉田兼英)。
萩原兼従は吉田兼見の孫、神龍院梵舜は吉田兼見の弟で、「豊国祭礼図屏風」にも描かれた吉田一族の姿がここにも見られます。
作品詳細
- Title:洛中洛外図 舟木本 部分 Folding Screens of Scenes In and Around Kyoto (Funaki Version)
- Artist:岩佐又兵衛 Iwasa Matabei
- Date:17世紀
- Medium:紙本金地著色 六曲一双
- Collection:東京国立博物館