15世紀のネーデルラント絵画は、写実表現においてイタリアに影響を与える存在でしたが、16世紀にはいると地位が逆転し、イタリアを古典・古代美術の手本として仰ぐようになります。
多くの画家がイタリア各地を旅行し、遠近図法や理想的な人体表現を習得しました。イタリア絵画に傾倒し、ルネサンス美術を取り入れた画家たちは、ロマニストと呼ばれました。
その一人、クエンティン・マサイスの描く女性像はレオナルド・ダ・ヴィンチの「モナ・リザ」を思わせる顔つきで、スフマート技法が用いられた作品もあります。
そのほか、ヤン・マビューズ(ホッサールト)、ヤン・ファン・スコーレル、ベルナルト・ファン・オルレイらがロマニストとして知られています。
その一方で、伝統的なゴシック世界にとどまりながら、新しい表現を追求したボスが現れました。ボスは、中世以来慣れ親しまれた宗教的主題を描きながらも、罪に満ちたこの世と地獄の情景と、かつてないほど生き生きと表現しました。
ボスの独特のスタイルはブリューゲルに受け継がれましたが、ブリューゲルの目は、伝統的なキリスト教的世界像よりも、世俗の社会に向けられ、風俗画、風景画、教訓など現世的な主題を多く描きました。