作品詳細
- Title:デルフトの眺望
- Artist:ヨハネス・フェルメール(ヤン・フェルメール)
- Date:1660年頃
- Dimensions:96.5×115.7cm
- Medium:油彩、カンヴァス
- Collection:マウリッツハイス美術館、ハーグ
作品解説
『『デルフトの眺望』は、フェルメールの残した2点の都市景観画のうちの1つです。
16世紀に風景がそれだけで絵画として成立するようになり、17世紀のオランダにおいて、風景画はさかんに描かれるようになりました。都市景観画が描かれ始めるのは1650年代になってからなので、フェルメールはいち早く流行をとり入れたといえます。
『デルフトの眺望』は、スヒー運河(コルク川)越しにデルフトの南側の街並みを描いています。
運河の入口にある黒い屋根のスヒーダム門の時計から、この絵は朝の7時頃の情景とわかります。
17世紀の美術理論では、現実を忠実に描くことが推奨されていましたが、この絵は実際のデルフトの街並みをそのまま描いたものではありません。
本当のロッテルダム門は水面にもっと突き出ており、右側の水面はこの作品の3分の1ほどしかありませんでした。スヒーダム門の向きも、岸壁と水平になるように変えられています。建物の高さも、実際よりも高低差がなくなっています。
これらの水平方向を強調するアレンジによって、『デルフトの眺望』は、穏やかで広がりを持つ作品になっています。
前景は陽が差していないため、青、赤、黒の屋根や茶色の壁は同じような色調になり、ごちゃごちゃした印象になるのを回避しています。岸壁に何艘も係留されている船も、水面に映った建物の影の色とほとんど同化して存在が目立たなくなっています。
手前の岸に立つ人物は、本当の大きさよりもかなり小さく描かれ、街のスケールを大きく見せています。
この作品は絵の具を何層にも塗り重ねた厚塗りで、絵の具の凹凸も効果を生んでいます。
プルーストは「世界でもっとも美しい絵」と称賛し、「失われた時を求めて」の中では、作家ベルゴットがこの絵の前で息絶えるという形で登場させています。
ロッテルダム門、スヒーダム門は取り壊されて、現在は残っていません。