マザッチョ『貢の銭』

マザッチョ『貢の銭』

作品詳細

  • Title:貢の銭
  • Artist:マザッチョ
  • Date:1424/1425-1427年
  • Dimensions:254.5×598.3cm
  • Medium:フレスコ
  • Collection:サンタ・マリア・デル・カルミネ聖堂ブランカッチ礼拝堂、フィレンツェ

作品解説

『貢の銭』は「マタイによる福音書」17章に典拠していて、あまり描かれることのない主題です。

カペナウムの町を訪れたキリストは、収税吏に神殿税を払うように言われます。キリストは聖ペテロにゲネサレ湖で魚を釣らせて、その口から出た銀貨を支払わせます。

神殿税を払わなければ、異端とみなされ、かといって自分のお金を納めるとパリサイ人に屈服したととられるため、キリストは奇跡によってお金を生み出しました。

この1つの画面には、3つの異なる時制の場面が同時に描かれています。

中央はキリストが聖ペテロに魚釣りを命じる場面。
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左は聖ペテロが魚から銀貨を取り出す場面。
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右は聖ペテロが収税吏に銀貨を渡している場面。
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この壁画は国際ゴシック様式の画家マゾリーノとの共同制作です。

マザッチョは遠近法を初めて用いた画家の一人で、この作品では、キリストの頭部に消失点が置かれています。

人物の表現にはジョットの影響が見られ、人々はそれぞれ個性的な表情を持ち、衣類の下に身体があることが感じられます。

ジョットの絵と違うのは、キアロスクーロが用いられていることで、特定の方向から差している光によって、人物や建物に明暗がつけられています。

キリストと使徒は古代ローマ風の服装をしているが、収税吏は15世紀の服装であり、建物もルネサンス風です。この作品以降、古代の人や物とその時代の人や物を同じ絵に描くことが盛んに行われました。

上記の点で、『貢ぎの銭』は初期ルネサンスの記念碑的な作品となっています。

ここに描かれた聖トマスは、マザッチョの自画像といわれています。
Masaccio

ブランカッチ礼拝堂の装飾壁画の注文主は、フィレンツェの貿易商フェリーチェ・ブランカッチです。

壁画に『聖ペテロ伝』が選ばれたのは、ブランカッチ家の守護聖人が聖ペトロであったためと、聖ペテロが教皇権の象徴であることから、教皇への支持を表すためと考えられています。

壁画の制作は、1420年代中ごろ、マゾリーニによって始められ、途中からマザッチョも参加しましたが、完成しないまま中断されました。

1435年、ブランカッチは反メディチの謀反の罪でフィレンツェを追放されたため、壁画に描かれたブランカッチ家の人々は消され、1480年代にフィリピーノ・リッピが完成させました。

1771年のサンタ・マリア・デル・カルミネ聖堂をほぼ全焼する火災では、ブランカッチ礼拝堂は焼け残ったものの、すすで絵が黒くなるなど保存状態が悪いままでしたが、1981-1990年に大規模な修復が行われています。

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