下部はボスワールド全開な感じ。全裸の男女がそこここで欲望の赴くままに好き勝手なことをしていますが、卑猥な感じはしません。ここに描かれた人々は、画面に描かれた鳥や動物や昆虫と一緒で、知性もなければ罪の意識もない無垢な存在に見えます(なぜか「進撃の巨人」の“無知性巨人”を思い出してしまいました)。
とはいえ、右翼では地獄が描かれているので、意識しているかどうかにかかわらず、罪を犯せば地獄に堕ちるということなのでしょうか。
この特異な画風から、ボスを異端の画家だとする説もあります。
「性交は飲食と同じく自然なものだから、万人の目の前でも恥ずかしがることなく行える」と主張したアダム派(自由精神兄弟会)やカタリ派の名前があがっています。が、もしボスが異端の宗派を信仰していたのなら、大の異端嫌いのフェリペ2世が蒐集するはずがありません(おおっぴらではなく、こっそり信奉していたのならアリ?)。
ゴンブリッチは、この絵をノアの洪水直前の人類の状態を描いたものと解釈しています。その時代の人々は何の疑念もなく悦楽の欲望に従っており、その罪の意識のないことが罪であるとする説です。しかし、そうであるならば、右翼には洪水の絵が描かれていたはず?
作品詳細
- Title:悦楽の園(中央パネル) The Garden of Earthly Delights(center panel)
- Artist:ヒエロニムス・ボス Hieronymus Bosch
- Dimensions:220×195cm
- Medium:板に油彩 Oil on panel
- Date:1458年以降
- Owner:プラド美術館