冨嶽三十六景 隅田川関屋の里

葛飾北斎 冨嶽三十六景 隅田川関屋の里 hokusai_Sumida-gawa Sekiya no sato

作品詳細

  • Title:冨嶽三十六景 隅田川関屋の里 Sekiya Village on the Sumida River (Sumida-gawa Sekiya no sato), from the series Thirty-six Views of Mount Fuji (Fugaku sanjûrokkei)
  • Artist:葛飾北斎 Katsushika Hokusai
  • Medium:錦絵
  • Dimension:大判 25.9 x 38.7 cm
  • Date:1830–31 (天保1-2)年頃
“かへるさの道に関屋の里もあれな、隅田河原のあかぬながめに”と古歌に詠まれた関屋の里は、足立区千住のあたりに相当する。今は煤煙に汚れた街並みであるが北斎のころはまだ古歌と変わらなかったらしい。
一面が芦に覆われた隅田河原に、堤が一本蛇行して走り、右端には奉行の御触れらしき掲示板が見え、注進であろうか、大小を差した三人の武士が、早馬で江戸の方角をめざす。かなたには、例のごとく泰然たる富士の姿である。人物が、同じ形として描かれているのをこの図の構成上の欠陥として指摘するむきもあるが、むしろ逆に、同型の反復によって、見る者の視点を遊動させる北斎一流の機智をここに見るべきだろう。人物の顔をわざと隠し、笠の円の反復を富士の三角形に対置させたところなども、かれのいわゆる規矩方円説を連想させて興味深い。(辻)
『原色日本の美術17 風俗画と浮世絵師』