マネ『草上の昼食』

マネ『草上の昼食』

作品詳細

  • Title:草上の昼食
  • Artist:エドゥアール・マネ
  • Date:1897年
  • Dimensions:208×264.5cm
  • Medium:油彩、カンヴァス
  • Collection:ボストン美術館、ボストン

作品解説

1863年のサロン(芸術アカデミーが主催する美術展、官展)の審査は非常に厳しく、落選者が多かったため、皇帝ナポレオン3世の命により落選した作品を集めた第1回落選展が開かれることになりました。

この作品は、その落選展に出品され、議論を巻き起こしました。

『草上の昼食』は、ジョルジョーネとティツィアーノによる『田園の奏楽』を下敷きにして描かれています。どちらも着衣の男性と裸婦の組み合わせですが、『田園の奏楽』の裸婦はニンフであり、『草上の昼食』では普通の女性であったことが、問題視されました。

もう一つの着想源は、ラファエロの原画に基づいたマルカントニオ・ライモンディの版画『パリスの審判』です。『パリスの審判』はギリシャ神話で、トロイア王子パリスが「最も美しい女神にあたえる」リンゴをヴィーナスに渡そうとしている場面を描いています。マネはこの『パリスの審判』から、人物のポーズを借用しました。

古典絵画の伝統を学んだマネは、その知識を生かして、自分の生きている第二帝政期のパリを描きました。

しかし、落選展を開かせたナポレオン3世が嫌悪感を示したように、『草上の昼食』は当時の人々の道徳感情を逆なでするものでした。

同年のサロンに出品されてナポレオン3世が買い上げた、アレクサンドル・カバネルの『ヴィーナスの誕生』のヴィーナスの方がずっと官能的ですが、神話の世界であれば、裸婦は許容されたのです。